ジャムの跡に口が重なる朝と、閉じきれない水曜日。
高瀬家の朝は、いつも通りに見える。 トースト、紅茶、新しいラズベリージャム。 母親は口を閉じ、息子は掠れた声で「おはよう」と言う。 食べかけのパンを渡す。跡に、唇が重なる。それ以上はない。金曜の店では、まだ止まれる。 若い声が「お母さん」と呼んでも、白くは飛ばない。 よかった、と自分に言い聞かせる。次の水曜。要望は短い。「今日は、後ろを。じっくりと」。 同じ場所を、正確に通される。止める力が、遅れる。 口を閉じようとしても、開いたまま残る。 家に帰っても、歩くたびに熱がずれる。息子は口元を見る。夫は隣で寝息を立てる。 触れそうで、触れない。なのに、後ろの熱だけが残ってしまう。 ※表紙・サムネイル画像にはAIを使用しています。 総文字数:約5300文字 総ページ数:本文25ページ
















